秘密の本棚

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わたらせ渓谷鐵道に乗ってきた

鉱山とともに歩んだ鉄道

先日、わたらせ渓谷鐵道に乗車してきました。まだ紅葉には早い時期ですが、なかなか行く機会もないので思い切って行くことにしました。

わたらせ渓谷鐵道はもともと足尾銅山の鉱石を搬出するために1910年代に建設された貨物線ですが、足尾銅山が使われなくなった現在はわたらせ渓谷鐵道として観光を中心に利用されています。群馬県桐生市桐生駅と栃木県日光市間藤(まとう)駅の間44.1kmを結んでおり、渡良瀬川の渓谷に沿ってトロッコ列車から渓谷美を楽しむことができます。

JR両毛線桐生駅に向かい、そこでフリーパスを購入。まずは普通列車に乗って終点の間藤駅を目指しました。小雨が降っていたのと窓ガラスがあったためうまく写真は撮れず、復路に望みをつなぎます。

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桐生駅停車中のわ鐵。これは比較的新型の車両

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途中ですれ違った車両。こちらは旧型で趣がある

足尾線の廃線跡を探る

終点の間藤駅から先は、車止めがあり線路が途切れています。しかし実は、国鉄の時代にはこの間藤駅から先にも線路が続いており、貨物列車が運転されていたそうです。乗ってきた列車の折り返し時間の間に間藤駅から少し歩き、その廃線跡を探してみることにしました。

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終点の間藤駅から先、線路は一旦途切れていた

間藤駅から、もともと線路があった方向に北上していきます。5分ほど歩くと、何やら道路が少し盛り上がったところが。なにかあるのかと思って近づいてみると、使われなくなった踏切でした。

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雰囲気が踏切っぽいと思ったら踏切だった

この踏切の右側は線路が撤去されてしまっていましたが、左側を見てみるとまだかなり線路が残っていました。

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列車が走ってきてもおかしくないくらいそのまま残っている

1973年に足尾銅山が閉山した後も1987年までは貨物列車が運転していたそうなので、それから33年が経ったことになります。30年くらいであれば結構そのまま残っているものなんですね。

踏切跡からさらに進むと、かつての足尾本山駅が現れます。非常に大きな建物で、かなり目立ちます。

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この超巨大な建造物が足尾本山駅

足尾本山駅は旧足尾線の終点となっていた駅で、工場を兼ねていました。この工場への搬出・搬入を貨物列車で行っていたというわけです。現在は壁も一部剥がれ落ちており、廃墟と化していました。台風などで周辺に板が飛ばされてこないか心配です。

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駅の中の配線もそのまま残っている

少し坂を登ると駅の中を垣間見える場所があったので、立入禁止でない範囲内でよじ登って撮影しました。駅構内の配線はそのまま残っているほか、腕木式の信号機も存在していることがわかりました。その役割を終えた足尾本山駅ですが、このまま放置されてしまうと価値を失ってしまいそうで心配です。

ところで、間藤駅から足尾本山駅までの間にはいくつか渡良瀬川をまたぐ橋がかかっていて、この橋から見る渓谷は非常に美しかったです。紅葉が綺麗そうです。

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渓谷のS字カーブが見事。

足尾銅山を見学

間藤駅に戻り、そこから10分ほど乗車すると通洞(つうどう)駅に到着します。ここから5分ほど歩くと足尾銅山を見学する施設があります。

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足尾銅山観光はこのエリアで外せない

黄色いトロッコに乗って坑道に進んでいくという体験は他ではなかなかできないと思います。見学自体は30分ほどで十分の内容ですが、見ごたえはありました。人形がリアルだという前評判は本当でした。足尾銅山の坑道の長さをすべて合わせると、1200kmにも及ぶそうです。

この足尾銅山の近くは、食事ができる場所が本当に少なく困るのですが、通洞駅から3分ほどのところにある「川本」という和食(うなぎ)料理店でとり丼をいただくことにしました。うなぎのタレで味付けしてある柔らかい鶏肉がたっぷり載った丼で、山椒をかけるととても美味しかったです。

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「川本」で食べたとり丼。

ちなみに昼食に関してはトロッコ列車では車内販売があるるので、そこでお弁当を買っておくのが一番安全だと思います。

ロッコに乗る!

ここまではずっと普通列車に乗ってきましたが、復路ではトロッコ列車に乗車しました。わたらせ渓谷鐵道のトロッコには「トロッコわっしー号」「トロッコわたらせ渓谷号」があり、前者は新しい気動車で運転されますが、後者はDE10形ディーゼル機関車で牽引されます。今回乗車したのは後者の「トロッコわたらせ渓谷号」。機関車で牽引するトロッコは雰囲気もバッチリです。なお、トロッコ列車に乗車するためには事前に整理券の購入が必要です。

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DE10形が牽引する「トロッコわたらせ渓谷号」

足尾銅山観光をした通洞駅からしばらくは右側にわたらせ渓谷の絶景を楽しむことができます。トロッコ列車ですから窓はなく、吹き込む風を感じながら存分に風景を見たり写真を撮ったりできます。わたらせ渓谷の特徴として、岩が全体的に丸みを帯びており、水が青色になっていました。水の青色は銅イオンの色なのでしょうか。

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渓谷を右に見ながら下るトロッコ列車

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まだまだ先に続く渡良瀬川

沢入(そうり)駅の先で橋を渡り、今度は渓谷が左側になります。沢入駅から次の神戸(ごうど)駅までの間には長さが5,242mもある草木トンネルがあります。このトンネルを抜ける間、トロッコ列車の車内は風が吹き込み大変寒くなります。また当然車窓も無く、ここでは窓のある車両に移動するのが正解ですが、トロッコ車両にはこんな粋な仕掛けがありました。

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トンネル内での車両天井のイルミネーション

天井にLED電球のイルミネーションがあり、草木トンネル内でのみ点灯されていました。これで多少寒さも和らぐ…か?

駅隣接の施設で楽しむ

神戸駅構内には東武特急「けごん」の車両が留置されていますが、その車内を利用してご飯を食べられる「清流」というレストランがあります。そば・うどんや定食などのメニューがあるようです。神戸駅にはほとんどの列車が少し長めの停車をするので、停車時間中に見学に行くとよいです。

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レストラン「清流」の内部(車内)。わたらせ渓谷鐵道から

トロッコ列車神戸駅を発車すると次は水沼駅に停車します。水沼駅には水沼駅温泉センターがあり、その名の通り日帰り温泉があります。

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水沼駅温泉センター。駅徒歩0秒で温泉に入れる

せっかくなのでトロッコをこの水沼駅で下車し、立ち寄ることにしました。施設のお風呂には内風呂と小さめの露天風呂、そしてサウナと水風呂が用意されており、次の列車が来るまでゆっくりすることができました。わたらせ渓谷鐵道フリーパスを提示すると20%の割引を受けることができ、これで浮いた分を入浴後のコーヒー牛乳に費やすことができます(浮かなくても費やすのですが)。

水沼駅の温泉に入った後は再び普通列車で相老(あいおい)駅に向かい、東武線の特急に乗り継ぎ帰路につきました。なにしろアクセスが遠いわたらせ渓谷鐵道ですが、他では見られない景観と哀愁をもった独特な鉄道だと感じました。